コロナ対策で変わる2020年ものづくり補助金のポイント(1)

ものづくり補助金はすでに1次公募が終わり、まもなく2次公募がスタートします。すでに1次公募からお分かりの通り、「通年公募」や「賃上げ、最低時給条件」「計画未達成の場合の補助金返還」など、これまでにない新たな条件が加わりました。さらに、先日の緊急経済対策で生産性革命推進事業に含まれるものづくり補助金は、ポイントにいくつかの変化がありました。早速、その内容を確認してみましょう。

ものづくり補助金とは?おさらい

パートナー企業である株式会社えだまめの運営する「おいしい冷凍食品研究所」から引用すると、ものづくり補助金とは次のようなものです。

補助率と補助額は?

補助率1/2~2/3で、最大で1,000万円となっています。補助率の違いは申請する事業者の規模によります。

誰が申請できるの?

「ものづくり補助金」は、中小企業や小規模事業者向けの制度です。資本金または従業員数が一定水準以下である必要があります。

業種                   資本金       従業員数     
製造業、建設業、運輸業
ソフトウェア業または情報処理サービス業
その他
3億円以下300人以下
ゴム製品製造業3億円以下900人以下
卸売業1億円以下100人以下
旅館業5,000万円以下200人以下
その他サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下

ここでいう従業員とは勤務されている方のうち、会社役員や個人事業主以外の常勤従業員の方々です。また、資本金と従業員の要件は「または」となっており、どちらかを満たせば申請できる可能性があります。

よくある質問に「アルバイトはどうでしょうか?」とありますが、この場合は労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」とあり、日々雇い入れられる方や2か月以内の期間を定めて使用される方、季節的業務に 4 か月以内の期間を定めて使用される方、試用期間中の方は含まれません。ですので、日ごろからしっかりと雇用契約を締結して、どの採用パターンなのかをはっきりさせておく必要があります。

また、各種団体として組合なども対象になるほか、今年からは特定非営利活動団体も対象となりました。

どんなものに補助金は交付されるの?

「ものづくり」の名を冠した補助金であることから、工業系の補助金のように思われがちですが、採択事業者のなかには農作物などの生産者、漁業関連事業者、食品製造業、飲食店運営事業者なども含まれています。

こういった事業者が、新しいサービスや試作品の開発、生産性向上に取り組むための設備投資であることが必要です。

ここで対象となる設備投資とそうでないものを確認してみましょう。

項目補助対象補助対象外
機械装置費・
システム構築費
・機械装置や工具器具の購入費、製作費、リースレンタル料 
 工具器具とは、測定工具、検査工具、電子計算機、デジタル複合機等
・補助事業専用ソフトウェアの 購入費、製作費、リースレンタル料
・自社製造する場合の部品費
・これらの改良修繕費、据付費
・3者以上の中古品流通事業者から相見積りを取得している場合の中古品
・製作や開発にかけた自社人件費
・補助事業以外にも使える機械装置、工具器具、ソフトウェア
・補助金交付決定前に契約したリースレンタル料
・補助対象外機械装置にかかる改良修繕費
・機械装置設置場所の整備工事や基礎工事
・流通性がなく価格の適正性が証明できない中古品
技術導入費・知的財産権等の導入に必要な経費・補助事業と関係ない知的財産権等の導入経費
・技術導入費、専門家経費、外注加工費、委託費の支払先は重複不可
専門家経費・謝金
・旅費
・委員会委嘱料
・技術指導料
・補助事業と関係ない謝金、旅費
・技術導入費、専門家経費、外注加工費、委託費の支払先は重複不可
・事業計画書作成料
運搬費・運搬料
・宅配料
・郵送料
・補助事業と関係ない運搬料、宅配料、郵送料
クラウド利用費・自社保有でないサーバーの初期設定、
 アプリケーション構築、データ移行経費
・補助事業のための
 アプリケーション改良費
・専用アプリケーションマニュアル制作費
・月々利用料
・補助事業以外にも使えるパソコン、タブレット、スマホ
原材料費・試作品の開発に必要な
 原材料、補助材料
・商品製品のテスト販売に必要な
 原材料、補助材料
・補助対象期間中に使いきれなかった原材料等
​・補助対象期間中にテスト販売ではなく本番販売するための原材料等
外注加工費・試作品の開発に必要な
​ 原材料等の再加工、設計、分析、
 検査等を外注する場合の経費
・外注先の機器を使う場合の使用料
・外注先の機械装置購入費
・技術導入費、専門家経費、外注加工費、委託費の支払先は重複不可
委託費・公的研究機関、大学等に
 試作品等の開発の一部を委託する経費
・委託先の間接経費や一般管理費
 (直接経費の10%限度)
・委託先の機械装置購入費
・技術導入費、専門家経費、外注加工費、委託費の支払先は重複不可
知的財産権等
関連経費
・試作品等の事業化にあたり、
 特許を取得するための弁理士費用や
 外国特許出願のための翻訳料
・国際規格認証取得のための経費
・補助事業と関係ない発明にかかる経費
・事業期間内に出願手続を完了していないもの
・日本の特許庁に納付される出願手数料
・拒絶査定に対する審判請求、訴訟経費
対象外役員報酬、給与手当、敷金礼金、事務所家賃、駐車場家賃、消耗品費、水道光熱費、通信費接待交際費、会議費税理士費用、弁護士費用、支払利息                        

ちなみに、交付決定前に購入した設備は対象になりませんので要注意です。ただし、新型コロナウイルによって流通に影響が出ている事業者が緊急措置として事前に購入や設置の準備をすることは事前に申請書を公募申請時に出すことで認められます。

いつ申請できるの?

今年から通年公募と言って、3か月おきに公募時期がやってきます。公募は1回ダメでも何回でもチャレンジできますので、書き直しをしてよりよい計画にすることで採用の道が拓けます。

第1回締切:令和2年3月31日(火) ※すでに終了
第2回締切:令和2年5月20日(水) ※ただいま募集中
第3回締切:令和2年8月頃予定   
第4回締切:令和2年11月頃予定  
第5回締切:令和3年2月頃予定

どうやって応募するの?

今年から、経済産業省の補助金電子申請システム「Jグランツ」を使った応募に変わっています。Jグランツを使えるようにするには、「g Biz ID」を取得す必要があります。この手続きを確認しましょう。

●g Biz ID の取得
g Biz IDのホームページにアクセスする
➁「g Biz IDプライム作成」をクリック
③必要事項を記入
④ブラウザ上に発行される申請書を印刷
⑤会社の実印を押印。(日付もご記入ください)
⑥直近6か月以内に発行した「印鑑証明書」と共に申請書下部に記載されている事務局まで郵送ください。
※発行までには2~3週間かかります。
※登録される携帯電話番号は、申請の際に使用するワンタイムパスワードをSMSで送るためのものですので、申請時に入力される方が使いやすい番号を指定してください。
※緊急経済対策の発表で、このシステムを使った補助金などの申請が増えていて、IDの発行申請が増えていると思われますので、早めの対応をお勧めします。


この申請を終わらせたらJグランツのサイトへ行き、ものづくり補助金の申請をクリックして必要事項を入力します。

では、Jグランツに入力するために必要な書類はというと、ものづくり補助金の特設サイトにある「事前計画記載事項」にあらかじめ準備をしておきましょう。

ちなみに、この電子申請の取り扱いマニュアルは以下のリンクにあります。

必要な書類は?

審査にあたって、上記の申請書の他にも必要な書類がありますので、事前に準備しましょう。

  • 決算書(直近2年間の貸借対照表、損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表)
  • 賃金引上げ計画を従業員に表明したことを示す書類
  • 事業の具体的な内容 その1・その2及び その3:会社全体の事業計画の算出根拠(計10ページ以内での作成にご協力ください)
  • 審査における加点を希望する場合に必要な追加書類

※事業を開始してまもない法人事業者は、決算書の代わりに設立事業計画書の提出が必要です。
※個人事業者の場合は確定申告書になります。

事業計画でクリアしなくてはいけない数値目標は?

次の要件を満たす事業計画(3〜5年)を策定し実施が可能な中小企業なら、応募ができます。

○交付決定日から10か月以内(ただし、採択発表日から12か月後の日まで)の事業実施期間に、発注・納入・検収・支払等のすべての事業の手続きがこの期間内に完了する事業であること。(原則、事業実施期間の延長はありません)

○以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定し、従業員に表明していること。

●事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
●事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
●事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加

付加価値額の要件は以前の制度からあったのですが、今回から賃金に関する要件が加わり、これらは達成できないと補助金の返還をする可能性があります。ご相談で多い内容もこちらです。ただし、今回の新型コロナウイルスの問題で、簡単にこの賃金に関する達成が難しいことから、次のような猶予措置もあります。

  • 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、サプライチェーンの毀損等に対応するための設備投資等を行う事業者については 上記要件に係る目標値の達成時期に1年間猶予がある。

今回は新型コロナウイルスに対応する事業者に向けて積極的な支援をする姿勢が見られます。

気になる返還規定とは?

とはいうものの、せっかく交付された設備投資資金が目標未達成で変換する羽目になっては目も当てられません。いったい、どんな場合に返還は必要なのでしょうか?

①申請時点で、賃上げ計画を従業員へ表明していないことが発覚した場合は全額返還
➁事業計画終了時点で給与⽀給総額要件が未達の場合
 「残存簿価等×補助⾦額/実際の購⼊⾦額」 を返還 
③毎年度末(毎年3⽉)時点で最低賃⾦要件が未達の場合
 「補助⾦額/計画年数」 を返還

ということで、給与支給額や最低賃金の目標が達成できないと結構大きな額を返還することになります。一部、天災等の与件があった場合にはこの規定に沿わないというのもありますが、これはしっかりとした事業計画とその後のフォローをして着実に達成しなくてはいけません。

おそらく、国としては賃上げをするためにその賃金の一部を補助金として負担しているという気持ちなのかもしれませんね。

事業計画を着実に達成するためには

このように、今年からものづくり補助金は返還規定ができるなど非常に厳しい内容に変わってしまいました。すると大事になってくることが見えてきます。

事業計画の精緻化とフォロー体制の充実

これまでは「補助金コンサルタント」と呼ばれる、補助金の申請と採択に長けたコンサルタントの方が、電話でのヒアリングだけで計画書を作成して採択されることが多かったです。

この場合は、実際にその事業者にとって実現可能性の高い事業かも判断せずに見栄えのいい書類を作成することに特化していたため、付加価値額などの収益性が未達成に終わる事業者が多かったと聞きます。

返還規定はそういったことから設けられた厳しい規定とも言えます。そうならないためには、そういった紙だけで判断するコンサルタントに依頼をするのではなく、しっかりと現場まで足を運んでくれて、技術指導や事業計画への助言をしてくれる頼れるコンサルタントとともに作りこんだ計画を策定しましょう。

また、策定後もしっかりとしたマイルストーンを取っているかを確認するために、定期的に助言をうけて、毎年の補助金の監査時に「自信をもって業績を提出できる」そんな形の関係性が築けるのがいいでしょう。

次回は、ものづくり補助金の事業計画のポイントと新型コロナウイルスの対応について説明をしていきたいと思います。

補助金申請の事業計画の策定とフォローはプロにお任せください

はじまりビジネスパートナーズは、食品事業者の生産管理の改善を支援する取組みを日頃より行っています。ものづくり補助金の申請においても、他のコンサル会社と異なり「事業者様が面倒になるくらい」現場に入ったり、繰り返しのヒアリングをして、徹底的に生産上の課題を洗い出します。

また、作った事業計画の責任もありますので、採択後のフォローもしっかりとさせていただけるような長期的なお付き合いのできる事業者様の効率的な設備投資をお手伝いしたいと思っています。

専用の分析シートで賃上げの経営に与える影響やマーケティングリサーチもすることで、「補助金策定でここまでの事業計画をつくるのか?」と驚かれることが多いです。ぜひ一度、相談だけでもいかがでしょうか?

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