コロナ対策で変わる2020年ものづくり補助金のポイント(3)

ここまで解説してきたものづくり補助金に関しては今回が最後です。まだ過去の記事をご覧になってない方は、ひとまずこちらをご覧ください。

http://column.hajimari.co.jp/archives/81
http://column.hajimari.co.jp/archives/95

ここでは、申請にあたってどういった点に気を付けなくてはいけないのか?電子申請での注意点や加点要素について説明をしていきたいと思います。

何をテーマにするべきなのか?

ものづくり補助金は正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といって、生産性を上げる取り組みに対して補助金を交付するのです。次のような取り組みである必要があります。

新製品の開発又は生産
新役務の開発又は提供
商品の新たな生産又は販売方法の導入
役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動

すべての項目に「新」という言葉が入っています。すなわち、地域や業界といった単位でみて、「初めてとなるような取組み」ということが審査では重視されます。ですので生産性はもちろん、革新性実効性持続性といったようなテーマも大事なんです。審査においては、技術面事業化面政策面という言葉で出てきますが、このように解釈したほうがより分かりやすいでしょう。

審査のうえででは次のようなことを満たしているかどうかがカギになります。

11のポイント 着眼点
➀取り組み内容の各申請 技術面
②課題や目標の明確さ
③課題解決方法の優位性
④技術的能力
⑤事業実施体制 事業化面
⑥ユーザー(市場・消費者等を含む)のニーズを捉えた開発・投資
⑦事業化までのスケジュールの妥当性
⑧補助事業としての費用対効果
⑨地域経済への波及効果 政策面
⑩ニッチトップとなる潜在性
⑪環境配慮性

こういった内容ができるだけしっかりと入っていれば、それは審査の時に有利になるということです。それではひとつずつ見ていきましょう。

基本の基本である生産性の書き方とは?

それでは、まず「悪い見本」から見ていただきます。

【悪い見本】
新設備を導入することで、従来の2倍の生産量が確保できる。

さて、これはどうでしょうか?一番やりがちな話ではないでしょうか?これは「生産性」の意味を分かっていないときの記載方法です。生産性とは、

生産性 = 産出量 / 投入量

であらわされる生産上の「効率性」です。産出量には「売上高、生産量、粗利額」など生産によって意味出されるもの、投入量には「人、材料、時間」などの生産にあたって投入した資源を入れます。食品業界での代表的な指標では「人時生産性」などが代表的でしょうか?

そういった意味で、上記の記載は手直しすると次のようになります。

【良い見本】
新設備を導入することで、標準化が図れることで多能工化が進み、オペレーターの数を2人から1人にした上で、生産量は従来の2倍に増やすことができる。

といったように、生産性の分子も分母もどのように改善するのかをしっかりと書くといいでしょう。

技術面=革新性とはどんなことか?

革新性というものに対して国はどのように捉えているのか?という視点が必要です。この革新性とは次の3つの視点が重要です。

1既存技術の転用 既存の技術を応用して、新たな顧客や販路を開拓できるか?
2隠れた価値の発掘 これまで対応できていなかった顧客ニーズの発掘がされているか?
3新規性 地域や業界で同じような取り組みをしている者はいないか?

これらに関しても同じく悪い見本とその手直しを見てみましょう。

【悪い見本】
従来設備はスライスした製品を並べて包装することができず、顧客の要望する製品が生産できない上に納期対応もできない。そのため、新規設備を導入したい。

【良い見本】
従来設備は不可能であったスライス製品の包装を、包装しやすい形状の製品に生産工程を変更したうえで、自社で設計・要望した新規設備でその包装しやすい形状の製品を生産することで顧客ニーズに対応をした新製品を作る。

といったような内容です。上記で言えば「生産工程の変更」は「既存技術の転用」で、「自社で設計・要望した新規設備の導入」で「隠れた価値の発掘」や「新規性」となり顧客ニーズに対応をします。

事業化面=実効性とはどんなことか?

こちらで重要視される実効性とは「数値目標」と「それを達成するための組織であるか?」という所です。数値目標とは、ものづくり補助金の。「3~5年計画で「付加価値額」年率平均3%以上」という目標を確実にクリアできる事業計画であるかということが求められます。

ここでしっかりと理解をしておきたいのが、付加価値です。付加価値額とは「営業利益+減価償却費+人件費」となっています。つまり、3~5年計画の中でしっかりと利益を残して、人件費としてその利益を配分したか?ということが問われるわけです。

では、利益を残すということはどういうことでしょうか?単純に言えば「売上をしっかりと上げて、余計ない費用を削減する」ことに尽きます。そこで、この付加価値額を向上させるという所でもしっかりとした数値のシミュレーションが大事になります。

売上といえば「単価×数量」です。それが「客先別」にどのように3~5年間売っていくのか?ということを明確にしておく必要があります。例えば、次のような表を作っておくといいでしょう。

またこの時に、しっかりと売上予測の根拠も添えて説明するといいでしょう。例えば「A百貨店は全国に〇店舗あり、1日〇個の発注が期待でき、合計で〇個の販売を計画している」といったような形です。また、評価が高いのは「発注の内示がある」といった内容です。例えば「A百貨店の本部商品部との間ですでに仮契約を締結しており、設備投資が間に合えば早くて〇月には確実に達成できる売上である。」といったような内容です。この内容は、申請の最後にも打ち込む必要があります。

また、同じように重要視されるのが、実効性のある組織体制かどうかです。今回は総賃金の伸び率も審査の要件になってる訳ですが、少ない人数や十分な報酬を与えないままに利益を伸ばすというのはいささか疑問のある経営手法です(とはいえ、今年のコロナ問題で人件費を年率1.5%伸ばすのは至難の業ですが)。ですので、実施においてしっかりと人員を増やしていくことも求められます。

さらに、次のような一覧にするか、組織図を書くような形で実施体制を分かりやすくします。この時に外部の専門家としてその事業を成功に導くアドバイザーを事業期間中につけておくというのもよいでしょう(実際に、ものづくり補助金の中には専門家の謝金も含まれます)。

さらに、「給与支給総額」についてもどのような形で年率平均1.5%以上を5年間で伸ばすのかを考えます。これも売上と同じく「人数×時給×時間」といった形で雇用形態別に分けて計算します。これは少し骨の折れる作業です。

ニーズなどに関しては、しっかりとマーケティング調査を実施したうえで「客観性」のあるデータを用いて対応をします。

すると最後に次のような項目で数値を打ち込みます。

ここで気を付けるのは、付加価値額も給与支給総額も「基準年度(直近決算)」を基準にしてです。前年ではないので注意してください。また、「年率平均」ですので、給与支給総額が5年後に直近決算と比べて、1.5×5=7.5%以上になっていれば、基準はクリアとなります。

政策面=持続性とはどんなことか?

政策面や持続性とは、国が喫緊の課題と考えていることに対する解決に導くものか、ニッチな分野でトップに立てることから、その事業に持続性を持つことができるか?という観点になります。募集要領の内容を略さずに見てみましょう。

① 地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより地域の経済成長を力強く牽引する事業を積極的に展開することが期待できるか。
② ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。
③ バイオマス素材を用いた資源循環型プラスチック製品の開発等、環境に配慮した持続可能な事業計画となっているか。

例えば①であれば、「地域の特産の〇〇を生かして、従来は周辺業者では導入が困難であった〇〇問う機会を導入して、地域初の〇〇を生産することで新たな特産品を生み出すだけでなく、農業者との連携が強化されることで、農商工連携の効果を生み出すユニークな事業である。」

例えば②であれば、「従来はチルドでしか流通していなかった〇〇に対して、冷凍〇〇という新ジャンルに取組み、今後潜在需要が顕在化されるニーズに対応をして、事業化3年後には他者と比べて優位な競争地位につける。」

例えば③であれば、「主原料である〇〇の残渣はでんぷん質であり、バイオマス発電を施設を入れることで環境に配慮している。特に近年国連でも我が国が加盟して注目されているSDGsの取り組みで持続可能な農業の実現をしたいと考えている。」

といったことで、しっかりとこれらの要素のうちにどれかに当てはまるような事業になっているかは非常に重要な要素なのです。

電子申請で気を付けるべき点とは?

まず、ものづくり補助金の場合はJグランツの総合サイトからではなく、ものづくり補助金の専用サイトからg BIZ IDを利用してログインします。

http://portal.monodukuri-hojo.jp/ (ものづくり補助金電子申請)

基本的には、申請システムのガイダンスに沿って、事前に準備して作成したWordの内容にそって入力をしていきます。参考までに、事前に準備しておくWordのフォーマットはこちらです。

http://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/sankouyoushiki1_0417.docx

小規模事業者の場合に別途準備するもの

小規模事業者の場合には労働者の名簿を1名1名入力していく必要があります。

これは小規模事業者として、従業員の要件を満たしているかを確認するためのものです。

小規模事業者とは、常勤従業員数が、製造業その他業種・宿泊業・娯楽業では20人以下、卸
売業・小売業・サービス業では5人以下の会社又は個人事業主のことを指します。非特定営利活動法人は20人以下です。

もし、採択後の確定審査の時に、この帳簿と照らし合わせて増えているようだと、補助率が2/3から1/2に減額されてしまいますので要注意です。

せっかく作った図や写真、表はどうしたらいいのか?

先ほどの事前準備のWordには、事業の内容や準備する機械がわかるように図表や写真を挿入すると思います。その時はどうするかというと、先ほどの各種計算の算出根拠とともにこのWord文章をPDFに変換して、下記の画面でアップロードをします。

その他の資料という所でアップロードします。枚数は10枚以内に収まるように調整をしてください。

加点要素とは?

今までの内容をしっかりと網羅すれば、採択に近い事業計画になるのですが、、、。最後にもう一押し、しっかりと採択されるためには次の4つの加点要素があります。

4つの加点要素

①成長性加点        経営革新計画承認書(当該計画の写しを含む)
②政策加点       開業届又は履歴事項全部証明書(創業・第二創業の場合)
③災害等加点    自然災害による被害状況等証明書【様式2】、(連携)事業継続力強化計画認定書(当該計画の写しを含む)
④賃上げ加点    特定適用事業所該当通知書(被用者保険の適用拡大の場合)

この中で②は創業まもない事業者や事業承継をしてビジネスモデルの転換をしたての事業者などについて言えることで、書類を添付すればいいだけで加点となるので楽でいいですね。

④の賃上げ加点の特定適用事業所とは中小企業でも、厚生年金保険の被保険者数が500人以下の企業に属する事業所で、かつ、「労使合意」を行った事業所のことをいいます。これは該当するかどうかは顧問の社労士に確認してみるといいでしょう。

今回、当ブログで取り上げるのは①経営革新計画と③事業継続力強化計画です。

経営革新計画とは

これまでの事業とは異なる、新しい取り組みに対して都道府県知事がその事業計画を承認するという国の事業です。新しい事業とは

  • 新商品の開発又は生産
  • 新役務(サービス)の開発又は提供
  • 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
  • 役務(サービス)の新たな提供の方式の導入、その他の新たな事業活動

ということで「ものづくり補助金」と全く同じ内容を書くことになります。ものづくり補助金と同じように3~5年の事業計画を作成しますが、そこには達成基準があります。

計画期間「付加価値額」、又は「一人当たりの付加価値額」「経常利益」
3年間        9%以上3%以上
4年間12%以上4%以上
5年間15%以上5%以上

ということで、付加価値額の考え方はものづくり補助金と全く一緒です。また2つの基準はどちらかを満たせばよいとされています。

この絵は当社のサイトのより抜粋したものですが、事業者のみなさんは「認定支援機関」と呼ばれる商工団体や金融機関、中小企業診断士にその作成支援を相談に行ってもらいます。当社の診断士も認定支援機関が数名おります。

すると、事業計画のヒアリングや現場を拝見してその内容を「事業計画書」と「各県の申請書」に落とし込んでまいります。何回かの事業者のヒアリングをして承認されるものです。

内容はものづくり補助金に近いことを記入しますが、ものづくり補助金では触れない他の事業計画について掲載しても構いません。イメージとしては企業の中期経営計画を策定するような形です。ですので、事業計画書は多いと30~40ページに渡る大作となりますが、事業者のみなさまの今後の経営につながることですので、大事に取り扱っていただきたいです。

ここで少しだけ当社の宣伝をすれば、当社は「補助金コンサルタント」ではなくて「食品・一次産業製造コンサルタント」に軸があります。このようにものづくり補助金をお勧めするのは、こういった事業計画を一緒に作ってから良い事業になりそうなので「じゃあせっかくだし補助金を申請しようか」という流れでやっています。

ですので、ものづくり補助金を申請するときにはほぼ必ずと言ってこの経営革新計画をセットにします。ものづくり補助金の加点になるだけでなく、日本政策金融公庫の低利融資を申請できるなどの有利なものもありますので、提出・承認してもらうのに損はないと思います。詳しくは当社の経営革新計画に関するページをご覧ください。

https://hajimari.co.jp/business/certification/

ちなみに当社では、北海道、埼玉県、千葉県、愛知県、鹿児島県などでこの計画の申請をしておりますので、事業計画策定に関しては経験豊富かつみなさまの役に立つものを作成させていただきます。

事業継続力強化計画とは?

「中小企業等経営強化法」に基づき、自然災害等のリスク認識や事業活動に与える影響を踏まえて、事業継続力を強化するための取組を支援する事業で、管轄の経済産業局に提出します。当社も実はこの認定を受けています。

東日本大震災以来、サプライチェーンが機能しなくなったり、従業員が集まらず生産が滞った場合に備えてどのように事業を再開するかをあらかじめプランニングするものです。新型コロナ対策でさらに注目が集まりような制度です。

◎概要
中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定する制度です。認定を受けた中小企業は、税制優遇や金融支援、補助金の加点などの支援策が受けられます。

◎スキーム
計画策定後に、最寄りの経済産業局に提出して、経済産業大臣から認定を受けます。

◎認定までのステップ
こちらのステップは専門家のアドバイスを受けながら策定するといいと思います。

 

以上のような流れで作成します。今回のコロナの問題ではこういった課題が全国区で顕在化しましたので、製造業は特にやっておくべき備えでしょう。

加点要素の承認を待っていたらもの補助が間に合わなくない?

経営革新計画で1~2か月、事業継続力強化計画で45日間ですからこれを待っているとものづくり補助金の申請に間に合わなくなってしまいます。そこで、承認作業中の計画についてはものづくり補助金申請時に郵送済みであれば加点として加えることができます。

これらの認定書なども電子申請で計画書とともにアップロードする項目がありますので忘れずに行いましょう。

つまりものづくり補助金の採択率を高くするには?

繰り返しでしつこいですが、年々補助金コンサルタントが増えて皆様もその甘美な言葉と獲得資金などに吸い寄せられて乗っかってしまい「甘々な」事業計画でフォローもなく、結果目標府達成というケースが多く、国も私一個人の診断士としても非常に残念に思っております。

補助金ありきで事業を進めるのではなく、しっかりとした事業目的をもって正しい方向に導くような計画書の策定が非常に重要です。そのためには社内でしっかりと計画を組んだり、信頼のおけるコンサルタントなどとタッグを組んで取り組まれることが採択率の高い魅力的な計画だといえます。

このコロナ問題で大変な中ですが、国もそんななかでも元気に設備投資をして経営を高度化しようとする事業者を応援していますので、ぜひ応募されてはいかがでしょうか?3回にわたる長い投稿をご覧いただきましてありがとうございました。

補助金申請の事業計画の策定とフォローはプロにお任せください

はじまりビジネスパートナーズは、食品事業者の生産管理の改善を支援する取組みを日頃より行っています。ものづくり補助金の申請においても、他のコンサル会社と異なり「事業者様が面倒になるくらい」現場に入ったり、繰り返しのヒアリングをして、徹底的に生産上の課題を洗い出します。

また、作った事業計画の責任もありますので、採択後のフォローもしっかりとさせていただけるような長期的なお付き合いのできる事業者様の効率的な設備投資をお手伝いしたいと思っています。

専用の分析シートで賃上げの経営に与える影響やマーケティングリサーチもすることで、「補助金策定でここまでの事業計画をつくるのか?」と驚かれることが多いです。ぜひ一度、相談だけでもいかがでしょうか?

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