新型コロナウイルスの影響で、国内の飲食店など取引先からの注文激減で困っている食品製造業の方も多いのではないでしょうか?この危機に直面して、改めて事業の見直しや今後に向けた展開を考えている方も多いと思います。そんな今後を考えるうえで、「輸出」という選択肢はどうでしょうか?
食品製造業の輸出の意義と注意点
今後のリスク分散として「輸出」という手があります。なぜなら、コロナの封じ込めに他国に比べて時間のかかっている日本において、内需の復活を待つのは時間がかかりそうです。そうしたなかで、先行して復活するであろう外需を取り込むのは至極当然の流れといえます。しかし、輸出において困るのは
①言葉の壁
②ルールの壁
ではないでしょうか?今日は②のルールの壁を破る基本となる、「HACCPの導入」について説明したいと思います。
HACCPの導入が今後の輸出のカギになる!
HACCPの義務化が2020年6月(1年の猶予あり)に迫っている中、これをうまく導入できれば輸出への道が大きく開けていきます。 海外輸出を視野に入れたHACCPの導入について一緒に考えていきましょう!
HACCPと輸出。実は強い結びつきがあります。まずは、HACCPを導入することでどのような変化があるかということを確認し、それがなぜHACCPの導入が輸出拡大につながるのか説明していきます。
そもそもHACCPとは?
HACCPとは、原材料の受入れから最終製品までの各工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などの危害要因を分析した上で、危害の防止につながる特に重要な工程を、継続的に監視・記録する「工程管理システム」のこと。これまでの品質管理の手法である最終製品の抜取検査に比べ、より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能になります。
2018年6月に食品衛生法が改正され「HACCPに沿った衛生管理の制度化」が決まりました。2020年6月に施行され、事業者は1年以内に「HACCPに基づく衛生管理」あるいは簡略化した「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を行わなければなりません。
HACCPによる衛生管理はなぜ必要?
HACCP義務化が迫っていることは分かりました。では、HACCPによる衛生管理を進めていく必要があるのはなぜでしょうか?義務だからやらざるを得ないという考え方もあるとは思いますが、せっかくやるのであれば、その目的をきちんと理解し、今後の成長に活かしていきたいものです。
HACCPの導入が求められているのは、以下の2つの点からです。
①国内の食品の安全性の更なる向上を図るため
これまでの衛生管理の取組に加え、事業者自らが危害要因を把握し、重要な工程を管理することによりリスクの未然防止の確実性を高めることができます。 事業者それぞれがHACCPによる衛生管理を行うことにより、フードチェーン全体の衛生管理が見える化され、より安全性が向上することにつながります。
②日本の食品安全の国内外へのアピールするため
近年の食品流通の更なる国際化や、食品製造の現場での外国人労働者の増加、2021年東京オリンピック・パラリンピックの開催等を見据え、日本の食品衛生管理の水準が国際的に見ても遜色のないことを、国内外に示して行く必要性が高まっています。
諸外国でも導入が進められ、食品の衛生管理の国際標準となっているHACCPによる衛生管理について、日本においても制度として位置づけ、定着を図っていくことが必要という背景から、今回の義務化という流れになってきたのです。
HACCPが輸出拡大につながるのはなぜ?
ここで皆さんに注目していただきたいのは、HACCPの導入が日本国内のみならず「海外に向けて」商品の安全をアピールすることにつながるということです。HACCPが衛生管理のための手段から食品関連事業者の市場を国内から海外に広げるための切り札としてとらえられることができます。
世界に目を向けると、HACCPは既に食品衛生管理の国際基準として多くの国で義務化が進んでいます。海外に食品を輸出する場合、当然このHACCPに基づく管理ができているかどうかという事が見られます。
HACCPに基づく管理ができていることをきちんと説明できないと、取引を開始できないという事例も増えてきています。日本の食品は「安心・安全」を謳ってきましたが、そのことを根拠をもって示すことが今後ますます求められてきます。
【海外におけるHACCP導入状況】
台湾:2003年より、水産食品、食肉製 品、乳製品について、順次 HACCP導入を義務付け
EU:2006年より、一次産品を除 くすべての食品について、 HACCP導入を義務付け
中国:2009年より、食品安全法においてHACCP導入による食品安全管理水準の向上を奨励
米国:2011年に成立した食品安全強化法により、国内で消費される食品すべてについて、HACCP導入を義務付け
人口減少などにより、日本国内のマーケットは縮小が見込まれる一方で、世界の食市場は、2009年の340兆円から20年には680兆円と倍増が予想され、特に中国を含むアジア全体では、約3倍の増加が見込まれています。
世界の市場ではHACCPに基づく管理が当たり前。世界の市場にチャレンジするためにも、HACCPは一つの大きなカギになります。
HACCPの義務化にどのように対応するか?
それでは、輸出拡大を見据えたHACCPの導入はどのように進めていくのが良いでしょうか?HACCPの認証と一口に言っても、FSSC、自治体HACCP、業界HACCP、JFSなどなど数多くの認証システムが存在しており、どれをやったらいいのか迷う方も多いかと思います。海外市場を目指すならJFS-Cがおすすめです!その理由を見ていきましょう。
JFS規格とは?
さっそく、JFS規格とはどのようなものなのか見ていきましょう。JFS規格とは、JFSM(一般財団法人食品安全マネジメント協会)が策定した食品安全マネジメントシステムに関する規格のことです。
欧米を中心とした世界の食品小売・製造事業者において、GFSI(世界食品安全イニシアティブ)承認規格による認証が取引条件となりつつある中で、中小事業者でも取り組みやすい日本発の規格・認証スキームを構築しようということでできたのがJFS規格です。
JFS規格は、2018年にGFSI承認を取得。今後JFS規格の海外での認知度がさらに高まっていくことで、日本の食品の輸出力が強化されることになります。JFSのメリットは以下の通りです。
・日本語の規格であり、日本の事業者に使いやすい
・日本の生食・発酵食品等の食文化を踏まえたガイドラインを整備
・中小事業者にとっても取り組みやすい段階的な仕組
・現場からの改善提案を活用する仕組
・GFSI承認を取得しており世界に通用する規格
輸出を検討される場合は、国際規格に準拠した認証を取っておくと、輸入審査時にスムーズな検疫ができることが予想されます。
海外市場を目指すならJFS-Cがおすすめ!
JFS規格には、A規格(JFS-A)、B規格(JFS-B)、C規格(JFS-C)にレベル分けされており、徐々にJFS-Cまでステップアップしていくことができる仕組みになっています。
つまり、段階的に国際標準の食品安全管理レベルまでステップアップしていくことができるため、海外輸出を視野に入れたHACCPの取り組みを進めやすい規格になっているのです。
JFS-A:HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(弾力的にHACCPを含む)
JFS-B:HACCPに基づく衛生管理(Codex-HACCP を含む)
JFS-C:国際標準の食品安全管理(国際取引に使われる)
まずはどの程度自分の工場ができているか確かめてみよう!
みなさんの工場がどこまでHACCPに対応をしているかを、一度診断してみませんか?NTT東日本と共同で「HACCP診断ツール」を作りましたので、ぜひ試してみてください。
HACCP導入はプロにご相談を
HACCP導入に関してお悩みのことがありましたら、HACCPコーディネーターやJFS-A/B(E/Lセクター)監査員資格も持つ中小企業診断士がいるはじまりビジネスパートナーズへお気軽にご相談ください。HACCPだけでなく、経営全般にかかわるご相談もお受けできるのが特徴です。
さらに、HACCPの導入を簡略化できる、IT関連・IoT関連の機器は各種補助金が活用できるかもしれません。特設ページをご覧ください。